中央銀行によるCBDC国際決済の実証実験:まとめ

中央銀行によるCBDC国際決済
実証実験PoC:まとめ

このページでは、
中央銀行によるCBDC国際決済の実証実験
について、情報をまとめています。

※RippleはCBDCプライベート元帳を公表しています。

 

中央銀行による
CBDC国際決済の実証実験(PoC)

★ProjectDunbar:BIS&MASシンガポール中銀&オーストラリア中銀&マレーシア国立銀行&南アフリカ準備銀行さまざまなDLTプラットフォームで技術的なプロトタイプを開発、イノベーションハブのシンガポールセンターが主導、M-CBDCのPoC※JPモルガンとは別、2022年初頭に結果を発表予定*ソース 

★mCBDCブリッジ:BISイノベーションハブ、香港金融管理局HKMA、タイ中銀、中国人民銀行PBoC、アラブ首長国連邦中央銀行CBUAE、が参加。4つの別々のCBDCを相互運用可能にするアプローチ。*ソース

★ProjectNexus:BISイノベーションハブ、シンガポール中銀MAS、インド国立決済公社NPCI。PoCではなく、青写真。構想。2021年7月発表。ソース PDF
※NexusGatewayとルールブックにより相互運用性を確保しようという、RippleNetのパクリのような内容。

※ProjectDunbarは、M-CBDC共有インフラのPoC。mCBDC Bridgeは異なるCBDCの相互運用性のPoC。どちらもBISイノベーションハブが連携。

G20 BIS資料による解説

ProjectNexus:シンガポールセンター、ハブ&スポークモデル。国内FPSの接続方法を標準化し、APIにより相互運用に対応します。※たぶんRippleNetのパクリ

Project mBridge:複数の中央銀行が発行するホールセールCBDCの発行・交換ができる”共通プラットフォーム”を開発。

ProjectDunbar:複数の中央銀行が共同管理をおこない、民間金融機関が利用する、CBDCの発行・交換のための共通プラットフォーム。

ProjectJura:個別のサブネットワークを備えた個別運営の共通プラットフォームでの相互運用性を調査。

  • Nexus:国内FPSの相互接続
  • mBridge/Dunbar:CBDC発行・交換のための共通プラットフォームを開発。Dunbarは「スポンサー銀行」を使用するハイブリッドモデル。mBridgeは直接プラットフォームにアクセスする形。
  • Jura:CBDCプラットフォームと、個別のサブネットワーク(社債などを発行)との相互運用性を調査。

 

ISメンバーの中央銀行と協力してBISイノベーションハブ(BISIH)で進行中のプロジェクトはイノベーションが国境を越えた相互運用性に向けた進歩をどのように加速できるか。

FPSをリンクするいくつかのプロジェクトまたは、マルチCBDC配置を使用する(ボックス1)は、4つの定型化されたモデルに従って分類できます。

計画Nexus(ハブアンドスポークモデル)は、3つ以上の国内FPS間の相互運用性を調査します。クロス用CBDC、プロジェクトmBridge、Dunbar、Juraが関与する国境の相互運用性は、共通のプラットフォームモデルを使用して、国境を越えたコンテキストでCBDCを卸売りします。

 

 

 

その他:

  • サウジ中銀、UAE中銀「Project Aber」→IBMを技術パートナーとし、両国の6つの商業銀行が参加して、Hyperledger Fabricにより実証
  • MAS&BdF:シンガポール中銀とフランス中銀 → JPモルガンQuorumによる、m-CBDCの自動マーケットメイキングの実証実験。
  • MAS:シンガポール中央銀行「Project Ubin」 → JPモルガン Interbank Information Network(Quorum)の実証試験、アクセンチュア Cordaのユースケース検証試験。Quorum⇔Corda間でHTLC決済に成功。
  • BoT:タイ中銀・HKMA:香港中銀「Project Inthanon – LionRock」から、「m-CBDCブリッジ」へ発展 → R3CordaによりCBDCによる国際決済を検証。→ PBC DCI:中国人民銀行デジタル通貨研究所とCBUAE:アラブ首長国連邦中銀、BIS:国際決済銀行が追加で参加し「M(Multiple)-CBDCブリッジプロジェクト」に名称変更(2021年2月23日)※m-CBDCブリッジ
  • CPA:カナダ中央銀行「Project Jasper」→ フェーズ1~2:R3 Corda、フェーズ3:TMX Group CDS決済、フェーズ4:MAS Ubinと共同試験*外部リンク
  • 日銀・欧州中銀「Project Stellar」 → フェーズ2:Corda、Elements、FabricでのHTLCによるクロス元帳DvP決済の試験(2018年3月)、フェーズ3:ILPによるPvP決済、フェーズ4:取引情報の秘匿化技術の検証(Corda、Fabric、Quorum、PaymentChannelほか)
  • BIS・スイス中銀「Project Helvetia」 → ①分散元帳上にホールセールCBDCの発行、および②既存のRTGS上にホールセールCBDCを発行するPoC
  • Sveriges Riksbank:スウェーデン中央銀行 → アクセンチュアと「e-クローネ」の発行実験(2021)※国際決済ではなく内国リテール向け?

 

7つの中央銀行グループ(カナダ中銀、イングランド中銀、日本中銀、欧州中銀、米国中銀、スウェーデン中銀、スイス中銀)およびBIS(国際決済銀行)は、CBDCに必要な基本原則を特定するレポートを発表した。(2020年9月10日)

オーストラリアの専門会計士協会CPA Australia は、「中央銀行CBDS比較レビュー」を公表しました。

 

※中央銀行CBDCの問題点・リスク

ホールセールCBDCを中央銀行が発行する場合、顧客のKYCとAML、サイバー攻撃とバグに対する対策などのコストを管理する必要がある。

または不具合による風評被害を受けるリスクがある。

リテールCBDCを中央銀行が発行する場合には、信用リスクを引き受け、予測不能な市場の影響を大きく受けることになる。

 

※決済システムの主権問題について

PayPayやApplePayなどの決済ネットワークの使用者数が臨界点を突破すると、1企業により決済システム全体が支配される可能性がある。たとえば、AppleがApple決済コインを発行するなど。

実質的に企業がステーブルコイン等により通貨の発行量を調整するようになると、中央銀行は通貨政策の効力を失う可能性がある。

※国内で自国通貨以外が主要な通貨として流通するようになると、国家の運営機能が破綻する。(国家予算や税金などの仕組みが成り立たなくなる)

デジタル化により国家は経済的な主権を失う…!?

法的な規制が無い場合、GAFAのような巨大なユーザーベースを伴うSNSを運営する企業がすぐに決済市場を支配できることは明らか。(スウェーデン中銀レポートより)

中央銀行がリテール決済用CBDCを発行することにより、中小企業も気軽に低コストなWEB決済システムを取り扱うことができるため、市場の独占を防ぐことができるメリットがある。

また、市場を規制することは重要だが、監視のコストと変化に対する大きな遅延という問題がある。

MAS:プロジェクト Dunber

共通のプラットフォームでのm-CBDCのモデルは有望ですが、世界が単一の共通の決済プラットフォームに到達する可能性は低いです。このモデルは、要件と支払いポリシーがすでに類似している地域で役立つ可能性があり、一般的なアプリケーションの方が費用効果が高い可能性があります。このようなシナリオでは、複数の地域プラットフォームと単一管轄の単一通貨プラットフォームで、依然として断片化が発生します。このようなネットワークをリンクするための新しい接続モデルは、プロジェクトの一環としてさらに検討されます。”

≫MASホームページ:Dunber概要

シンガポール中銀(MAS)とフランス中銀(BdF)の「自動マーケットメイキング実験」:JPモルガンQuorum「Onyx」

2021年7月8日、シンガーポール金融管理局(MAS)とフランス銀行(BdF)は共同で、mCBDCの活用による国境を越えたトランザクションのシミュレートと、

「自動化されたマーケットメイキング(AMM)および流動性管理機能」の実験の完了を報告しました。

シンガポール中銀:MAS と フランス中銀:BdF の共同によるm-CBDCブリッジの実験は、JPモルガンQuorumテクノロジーを活用した「Onyx」によって実施されました。

実験はシンガポールドル(SGD)とユーロ(EUR)CBDCの国境を越えた取引とクロス通貨取引をシミュレートし、以下の4つの成果が確認されました。

確認された成果の内容

  • 1.さまざまなタイプのクラウドインフラ間での相互運用性のデモンストレーション。
  • 2.2つの中央銀行が独自のCBDCの発行と配布を独立管理しながら、クロスボーダー決済を可視化できるようにするネットワークの設計。
  • 3.自動マーケットメイキングによる実験的なSDG/EUR流動性プールのセットアップ。
  • 4.クロスボーダー決済チェーンに関与するコルレス銀行の数を減らすことができることを示す実験的なm-CBDCネットワークのシミュレーション。その結果、契約上の取決めの数、KYCの負担、それに関連するコストを削減できます。

実験では2つの中央銀行に限定されていましたが、この設計は異なる管轄区域にある複数の中央銀行と商業銀行の参加をサポートするようにスケールアップすることができます。

これにより、現在のコルレス銀行モデルで必要とされる複数の接続の代わりに、共通のプラットフォームへの単一の接続が使用されるため、統合が簡素化され、コストが大幅に向上する大きな可能性があります。

≫MAS公表

MAS:シンガポール中銀 – Project Ubin

MAS:シンガポール中銀は、「Project Ubin」において多数の金融機関および技術プロバイダーと協力し、最先端のブロックチェーン決済システムの実証試験を完了しています。

その中でも、実践的な多通貨決済プラットフォームを開発・運用した「フェーズ4」および「フェーズ5」は注目に値します。

Project Ubin フェーズ毎の実証内容

MAS:シンガポール中銀の実施した「Project Ubin」の各フェーズの内容は次のとおりです。

▼参考:フェーズ5Ubin決済プラットフォーム

【Project Ubin フェーズ毎の実証内容】

  • フェーズ1:SGDのトークン化
    – バンクオブアメリカメリルリンチ、シティ、クレディ・スイス、DBS銀行、HSBC、JPモルガン、三菱UFJ、OCBC銀行、SGX、スタンダードチャータード、UOB
  • フェーズ2:RTGSの再構想
    – アクセンチュア、R3、IBM、コンセンシス、マイクロソフト
  • フェーズ3:DvP決済
    – Anquan、Deloitte、Nasdaq
  • フェーズ4:国境を越えた支払いと決済(PvP)
    – カナダ中銀と共同実施、JPモルガン(Quorum)、アクセンチュア(Corda)
  • フェーズ5:広範なエコシステムコラボレーション
    – JPモルガン、アクセンチュア、40以上の金融機関および非金融機関

フェーズ1~3は割愛し、フェーズ4から解説します。

フェーズ4:国境を越えたPvP支払いと決済

PvPとは、Payment vs Payment つまり、スマートコントラクトエスクローによる支払いの同時決済のことです。

カナダ中銀とシンガポール中銀の共同実験により、カナダドル(CAD)とシンガポールドル(SGD)のクロスカレンシー、さらに「JPモルガン:Quorum」と「アクセンチュア:Corda」のクロスプラットフォームで

HTLC(ハッシュタイムロックコントラクト)によるアトミックトランザクションが検証されました。

フェーズ4で使用されたプラットフォーム:QuorumとCorda

Project Ubinフェーズ4の実証実験で使用されたプラットフォームは、JPモルガンが技術提供する「Quorum」と、アクセンチュアの「Corda」です。

Project Ubin フェーズ4では、SGDとCADのクロス通貨、QuorumとCordaのクロスプラットフォームで検証がおこなわれました。

カナダ中銀が「Corda」を活用し、シンガポール中銀が「Quorum」を活用しました。

ケース1:仲介銀行のFX両替による送金

ケース1では、カナダ中銀とシンガポール中銀(MAS)のRTGSの両方に口座をもつ国際銀行を仲介業者として決済するモデルを検証しました。

このモデルは現在のコルレス銀行による送金モデルと似ていますが、RTGSにより即時決済をアトミックにおこなうため、信用リスクと決済リスクを最小限に抑えることができます。

ケース2:外国の中央銀行の口座を利用した送金

このモデルを実際におこなう際には規制上の問題がありますが、フェーズ4では実行可能な実証試験モデルとして中央銀行の負債を利用するモデルの検証をおこないました。

外国の中央銀行口座を利用するモデルでは、下記の2つのモデルがあります。

  • ①直接外国の中央銀行に口座を開設するモデル
  • ②資産譲渡の形で、1つの中央銀行口座に2種類の通貨を発行するモデル

フェーズ4:実証実験の結果

フェーズ4では、シンガポール中銀のQuorumネットワークから、カナダ中銀のCordaネットワークに対して、クロスプラットフォームのHTLCアトミック送金がおこなわれました。

結果として、クロス通貨・クロスプラットフォームでHTLCは正常に動作し、いくつかの利点といくつかの問題点が認識されました。

フェーズ4は2019年5月に報告されたカナダ中銀とシンガポール中銀の共同レポートであり、実際には米Ripple社の最新技術はさらに高度な送金技術を確立しつつあります。

フェーズ5:広範なエコシステムコラボレーションの実現

MAS:シンガポール中銀が実施した「Project Ubin」の最終フェーズとなる「フェーズ5」では、下記の内容の検証を実施しています。

【Project Ubin – フェーズ5の内容】

  • 多通貨支払いモデルの開発(PvP決済)
  • 他のブロックチェーンネットワークとシームレスに接続するインターフェイス
  • プライベート取引所を使用した支払い・決済
  • 貿易の条件付き支払いとエスクロー
  • 貿易金融の支払いコミットメント

以上の内容について、40以上の金融機関および非金融機関とのワークショップとディスカッションにより検証しました。

フェーズ5は、「①技術的な開発(JPモルガン:INN)」「②ユースケースの開発(アクセンチュア:Corda)」「③相互接続インターフェイス」の3つに焦点を絞っています。

多通貨支払いモデルの開発

【導入】

国際支払いはこれまで断片化され、取引におおくの仲介者を必要とし、非効率で高コストな決済方法を採用していた。

しかし、国内での決済と同じように、国際的な支払いを共通プラットフォーム上でおこなうことで、即時低コストな国際送金決済が実現できる。

【技術的革新】

これまで、決済システムに対するガバナンスは、そのシステムの保守・運営・管理をおこなう単一の主体により行われてきた。そのため、国際的な決済システムを運営するためのガバナンスを調整するのは無理なように思えた。

しかし、ブロックチェーンの分散型システムを採用することにより、それぞれの中央銀行はそれぞれが管理する通貨に対するガバナンスを持ち、システムの保守・管理はそれぞれのインフラ上でおこなうことができる。

つまり、ブロックチェーンの分散型元帳を採用することにより、国境を越えた単一の共通プラットフォームを構築することが可能となった。

※ブロックチェーンの分散元帳なら、信頼する中央機関を必要とせずに共通プラットフォームでの安全な取引を実現できる。

フェーズ5を主導する2つのワークストリーム

フェーズ5のプロジェクトは、下記のワークストリームにより主導されました。

【フェーズ5を主導するワークストリーム】

  • テクニカル開発 – JPモルガン:Project Ubinフェーズ5の決済ネットワークは、JPモルガンがQuorumベースで開発する「Interbank Infomation Network(INN)」を利用しました。
  • ユースケース開発 – アクセンチュア:アクセンチュアは金融機関および企業と連携し、実際のブロックチェーンユースケースの検証とUbinペイメントネットワークとの統合性の確認を行いました。
  • DvP決済などの追加決済テスト – 1exchange、Digital Asset、Digital Ventures、STACS

Ubinフェーズ5:Quorum決済ネットワークの構成

Ubinフェーズ5決済ネットワークの構成は、次のとおりです。

中央に、「多通貨ブロックチェーン決済ネットワーク」を据えてその共通プラットフォーム上で、

  • 各国中央銀行や大手商業銀行がデジタル資産(ステーブルコイン)を発行・償還(図の左側)
  • 証券のDvP決済やエスクローなどの追加機能(図の上側)
  • プラットフォーム外のウォレットおよび分散元帳との接続(図の右側)

という3つの機能を実証試験環境で実現しています。

Ubinフェーズ5:技術アーキテクチャ

Ubinフェーズ5の技術アーキテクチャは次のとおりです。

  • 中央銀行および大手商業銀行によるデジタル資産の発行と償還(図の左側)
  • INN(Interbank Information Network)の参加銀行による多通貨決済DLTネットワークの活用(図の中央)
  • サードパーティによるエスクロー等、カストディサービスの提供(図の右側)
  • DvP決済等の追加機能の提供(図の上側)

 

スウェーデン中銀:e-クローネ実証実験

eクローネ実証実験の構造

 

 

各国中央銀行はあらゆる角度(PvP、DvP、ホールセール、リテール、ほか)から、CBDCの発行プラットフォームを検討しており、アクセンチュア:Corda、およびJPモルガン:INN(Quorum)が検証されているが、

今後はBISと中央銀行連合による多通貨決済用DLT共通プラットフォームが整備される流れか?要継続注視。

 

CBDC国際決済時のFX交換の検討

国際決済時のFX交換については、

  • 「Project Inthanon – LionRock」においては、Cordaネットワーク上での取引板(Bord rate)方式が検討された。

取引板方式

Corda上でのFX交換ネットワーク

実際のネットワーク上でのクロス通貨決済に、

 

 

 

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