Ripple社のCBDCプライベート元帳とは何か?
特徴と仕組み、XRP元帳との関係性について
このページでは、米国Ripple社が発表した「中央銀行CBDCのためのプライベートXRP元帳」についての情報をわかりやすく解説します。
※情報の正確性を保証するものではありません。
【推定】
- プライベート元帳上にXRPと同等の決済機能を持つCBDCを発行できる(Paychan、ほか)
- プログラマブルCBDC:CBDCを単なるトークンではなく、XRPのように決済用に最適化されたデジタル資産として発行できる
- 数万~数十万トランザクションを処理→リテール決済用途に使用できる
「JPモルガン:INN(Interbank Information Network)」における、ステーブルコイン発行・償還機能に近いか?
▼参考:INNのアーキテクチャ
Ripple社は決済通貨として「デジタル資産XRP」を推奨してきたが、XRPと同等の決済能力を持つCBDCを発行できるとすればどうなるか?
それでもXRPが利用されるのか?→管理者コストがない分、コスト優位性がある?
【CBDCプライベート元帳に関する概要(予測)】
XRP元帳上にも「イシュアランス(IOU)」の発行機能はあるが、パブリック元帳であるため秘匿性に欠ける。プライベートなネットワーク上に「CBDC」の発行機能を公開すれば、秘匿性のある状態で運用できる。
さらに、CBDCトランザクションの秘匿性を保ったまま、金融機関専用のプライベート取引所でFX交換をすればよい。(具体的には、アクセンチュア:Corda)
Ripple社が提供するCBDC発行向けプライベート元帳とは何か?
Ripple社が提供する中央銀行CBDC向けプライベート元帳とは何か?といえば、次のとおりです。
XRP元帳とは別のプライベート元帳です
Ripple社が提供するCBDC発行用のプライベート元帳は、XRP元帳の拡張機能ではなく、「プライベート元帳」です。
XRP元帳にも「イシュアランス(IOU)」と呼ばれる通貨発行機能がありますが、これはパブリック(公開された、誰でも確認できる)であり、秘匿性がない。
CBDCプライベート元帳 上にCBDCを発行すれば、一般には取引内容が公開されず、金融機関に必要な秘匿性を保つことができる。
Ripple社がCBDC決済システムを提供する
たとえば、現在の日本銀行(中央銀行)の決済システムである「日銀ネット」は、NTTデータが主要ベンダーとして運用をおこなっています。
それと同じように、Ripple社がこれまで培ってきた分散元帳技術をもとに、中央銀行に対してシステムを販売・提供していく形になると思われます。
あくまで「XRP元帳の拡張機能」ではなく、中央銀行CBDC向けの「プライベート元帳」です。
Ripple社が提供するCBDCプライベート元帳の特徴
Ripple社が公表した情報によると、Ripple社が提供するCBDCプライベート元帳の特徴として次のとおりです。
XRPLedgerの技術にもとづく分散元帳
Ripple社が提供するCBDCプライベート元帳は、XRPLedgerの技術にもとづく分散型(ブロックチェーン)の元帳です。
分散型(ブロックチェーン)元帳上にCBDCを発行するメリットとして、取引参加者が決済情報をリアルタイムに同期化できるため、非常に効率よく、齟齬がない状況で取引を進めることができる。
各国の中央銀行は、Ripple社のCBDCプライベート元帳技術を活用することにより、プライベート元帳上にCBDCを発行し、決済システムとして運用することができる。
1秒あたり数万~数十万トランザクションが可能
CBDCプライベート元帳は、オープンなパブリック元帳であるXRPとは違い、中央銀行または銀行が運用する信頼できるサーバーにより運用されるはずです。
これにより、CBDCプライベート元帳は1秒当たり数万~から、将来的には数十万トランザクションの取引処理能力を持つことができます。
XRP元帳と同じコンセンサスプロトコルを活用します
CBDCプライベート元帳では、XRP元帳と同じコンセンサスプロトコルを活用します。
RippleNetおよびInterledger支払いに対応できる
Ripple社が提供するCBDCプライベート元帳を活用することにより、RippleNetおよびInterledgerプロトコルスイートによりサポートされます。
これにより、マイクロペイメントなどの超高スループットを必要とする支払いにCBDCを活用することができます。
CBDCの相互運用性が保たれる
各国の中央銀行がRipple社のCBDCプライベート元帳技術を活用することにより、CBDC同士の相互運用性が保たれ、金融機関向けの「プライベート取引所」により効率的に低コストなFX交換をおこなうことができます。
▼参考:中央銀行のCBDC相互運用モデル
Ripple社の中央銀行向けCBDC元帳で何が変わるのか?
Ripple社の中央銀行向けCBDC元帳で何が起こるかを予測すると、次のとおりです。
※あくまで予測ですので、内容の正確性を保証するものではありません。
国境を越えた支払いがCBDCにより決済できるようになる
現状のRippleNet上での金融機関による国境を越えた支払いの決済は、「コルレス銀行関係」または「暗号資産取引所の流動性」等を活用しておこなわれています。
しかし、中央銀行が発行するCBDCが「CBDC取引所」に対応することにより、国境を越えた支払いがCBDCを介して決済できるようになります。
→RippleNetの存在意義はどうなる?
CBDC取引所により流動性が供給される可能性
中央銀行が発行するCBDCを、金融機関のみが参加できる「CBDC取引所」で交換することにより国際決済に必要な流動性をリアルタイムに決済できる、「CBDCのODLシステム」ができる可能性があります。
Interledgerにより、超高スループットなマイクロペイメントに対応する
Ripple社の提供するCBDCプライベート元帳が採用されることにより、中央銀行が発行するCBDCは超高スループットなInterledger支払いに対応することができます。
これにより、まるでインターネットのように世界中にどこでも自由に価値を送信できる「価値のインターネット」が実現に近づきます。
なぜCBDCは分散型元帳なのか?
なぜCBDCを分散型元帳で発行するのか?と言えば、次の理由があります。
ネットワーク参加者同士で即時に効率よく状態を共有できるから
たとえば、Ripple社が提供するCBDCプライベート元帳のコンセンサスには誰が参加するでしょうか?
– おそらく、中央銀行CBDCの利用者となる金融機関(銀行)がCBDCプライベート元帳のノードを運用することになるのではないでしょうか。
分散型の元帳によりCBDCを運用することにより、ネットワークの参加者である金融機関・銀行は低コストで効率的に齟齬なく、元帳上の状態を共有することができます。
これが、CBDCに分散型元帳を採用する理由です。
補足:中央銀行のCBDC実験について
各国の中央銀行は、すでにCBDCの発行に対して前向きにPoC(実証実験)をおこなっており、次のとおりです。
【中央銀行のCBDC実験について】
- カナダ中銀:Project Jasper – フェーズ3を完了
- シンガポール中銀:Project Ubin – フェーズ5(最終フェーズ)を完了
- 日本銀行、欧州中央銀行:Project Stella – フェーズ4を完了
ECB,BOJ,BOC,MAS、となかなか豪華な顔ぶれである。
とくに日本銀行と欧州中央銀行が実施したProject Stellaの第3フェーズでは、「Interledger」を活用した国際送金決済にフォーカスしている。
シンガポール中銀など、非常に積極的に実証実験に取り組んでおり、すでに最終フェーズを完了している。
補足:隠し元帳(hidden ledger)に関する議論
There is no "hidden ledger". This is a system to allow banks to create their own internal ledgers on the same software that the main XRPL uses, and link them to the main public XRPL.
— Matt Hamilton (@HammerToe) March 4, 2021
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